カメレオンクラブとハム太郎とわたし

サンタクロースがこの世に存在しないと知ってしまったのは、カメレオンクラブのせいだった。

5、6歳のころ、週末になると家族そろってデパートに出かけ、その中のカメレオンクラブで兄とゲームを見て回るのが大好きだった。

なかなか買ってもらえなかったけれど、ディスプレイに陳列されたたくさんのゲームソフトやハードを眺めているとそれだけで楽しかった。試遊機のプレイステーションを遊ぶ兄の横で画面を食い入るように見つめた。

やがてクリスマスがやってきて、兄はサンタクロースからゲームボーイアドバンスをもらった。大喜びの兄と一緒に開封すると、説明書と同封されていた紙に"カメレオンクラブ サンエー具志川メインシティ店"と書かれていた。疑念に駆られたわたしと兄は母に説明を求めた。母はあっけらかんと「サンタさんはカメレオンクラブでゲームを仕入れてるのよ」と言うだけだった。わたしはサンタクロースと仕入れという概念をどうしても結びつけたくなかった。

そのときからだろうか、わたしの目に映る世界が曇りだしたのは。

 

そんなカメレオンクラブで出会ったゲームの中で、最も思い出深いものがある。

"とっとこハム太郎2 ハムちゃんず大集合でちゅ"

である。

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言わずもがな、あの大人気アニメ"とっとこハム太郎"のゲーム化第2段の作品だ。

任天堂発売、ゲームボーイカラー/ゲームボーイアドバンス対応のアドベンチャーゲーム

このゲームがすごい。とにかくすごいのだが、具体的にどうすごいのかというと、幼児向けキャラクターゲームとは思えない鬼難易度と、その上で子供から大人までやり込める確かなゲーム性を兼ね備えた神ゲーなのである。

 

まず、ざっくりとゲーム内容を説明すると、

プレイヤーは主人公ハムスター・ハム太郎を操作し、各地にいるハムちゃんずを探し出しハムちゃんず基地に連れ帰るのを目的とする。ステージは全6面でひとつひとつのステージが細部まで作り込まれていて広大。自由度も高く、ハムちゃんず捜索以外にも様々なやり込み要素がある。

ざっくりまとめるとこんな感じだが、このゲームを語る上で外せない最大の要素が、

"ハム語"である。

要するにハムスター世界で交わされる言語なのだが、これがこのゲーム攻略のいちばんの鍵となる。ハムちゃんず捜索に加え、このハム語コンプリートが本作の2大目的である。

ハム語は全86種類で、ハムちゃんず捜索の過程で様々なハムスターから教わり、習得していく。

本作の鬼難易度たる所以はこのハム語にあると言っても過言ではない。なぜなら、ハムちゃんずを基地に連れ戻すためには、ステージの様々な場面でハム語を駆使し、順序立ててフラグを踏んで行かねばならないのだ。

まだおおよその世界の順序なんて知る由もない幼児たちが、このフラグ立てに何度つまづき、泣いたことだろう。わたしもその一人である。しかし、そんな数多の涙をも凌駕する面白さがこのゲームにはあったのだ。

 

はむはー、もぐちゅ、あたっちゅ、やーノン、ちーぶる、ちゃいっ、サンちゅ、、、。

 

このハム語たちに少しでも懐かしさを覚える方はいるだろうか。いればぜひ思い出してほしい、ハムちゃんずとして、無我夢中で走り回っていたあのころのことを。

 

幼少期から友達の少なかったわたしは、ハム太郎といっしょにハムちゃんずを探して冒険に出かけるあの時間が大好きだった。

少し大人になった今でも友達は少ないままで、けれどハム太郎と冒険に出かけることはなくなった。あんなに必死になって覚えたハム語も全部忘れてしまった。

ハム語のかわりに知ったたくさんの漢字、数式、化学式、歴史、映画、本、音楽、、。

わたしは勝手に世界のおおよそを知った気になっているけれど、ハム語を知っても全くゲームのフラグが立てられなかったように、わたしの人生は全く持ってうまく進んでくれない。

しかし、ハムちゃんず全員と再会しハム語をコンプリートしたわたしなら、、、。

 

今日はとっても楽しかったね。明日はもっと楽しくなるよ、ね、ハム太郎