おかわりもいいぞ!

先日、仕事終わりの帰宅途中に急なお誘いをもらい、デュビア辻くん宅へお邪魔した。辻くん特製のキーマカレーが参加者全員に振る舞われるという会で、わたし以外にも、カゴリムそうへいくん/白魯いぶきちゃん/謎の新入生こころちゃん/というそうそうたるメンバーが辻邸に終結していた。集まった時間は21時ごろで、我々には0時スタートのライブをナバロに観に行くという目的があった。それまでだらだらとYouTubeを垂れ流しながら、雑談に花を咲かせつつ、キーマカレーの完成を待った。わたしは当初この会を「皆でカレーを作ってワイワイ盛り上がる会」だと思っていたが、辻家のワンルームに備え付けられたキッチンは手狭だったため参加者は余り手伝う意欲に駆られず、ついに彼1人の手でキーマカレーが出来上がった。しかしその時点で時刻は23時過ぎ。ライブ開始時刻に間に合わせるため一同は慌ててカレーをかきこんだ。美味しかったが急いで食べたのであまり味わう余裕がなかった。しかし食べ残しひとつない紙皿の数々がこの会の成功を端的に表していた。

そして食後の余韻に浸る間も無く、ライブのスタート時間が迫っていたため急いで車に乗り込み一同出発。いぶきちゃんはある人物とナバロに向かう必要があるとのことでしばしのお別れ。彼女を除く4人はわたしの運転でナバロに向かい約10分後無事到着、なんとかスタート時間に間に合うことができた。わたしたち以外にもたくさんのオーディエンスで溢れたフロアは、これから始まろうとしているライブとその先にある別離に、妙に浮き足立っていた。何を隠そうこの日は、なかけんという男をみんなで見送るための夜だったのだ。

なかけんはわたしにとってナバロ周りでできたはじめての友人で、出会いは大学4年生の頃。当時わたしが所属していた軽音サークルの定期演奏会をなかけんが見に来ていて、そこで少しだけ話した記憶がある。以前からサークルの先輩のバンドがSisleyと対バンした話を聞いたりしていたので、なんとなく存在は認識していたけど、ちゃんと会話したのはそれが最初だった。そしてなかけんは終演後、定期演奏会のアンケート用紙に「誰か友達になってください!熊大ロック研究会のなかけんです!」というメッセージと共にTwitterのIDを書き残していた。それからしばらく経って、なかけんがMy Lucky Dayの初ライブを見にきてくれて、その場で自主企画に誘ってくれたおかげで、ナバロでの色んな出会いが増えていったと思う。

そんなことを思い出しながらライブを見ていたら、急に頬を涙が伝った感覚がしたので焦った。慌ててあのとき誘ってもらった「モンスターファーム」という企画の打ち上げの際、後にyard ratとなるメンバーたちが、DAYSのテーブルを囲みながらひとつのジッポを共有して煙草を吸っていた姿を思い出した。そうすると急速に涙は収まっていった。

やがてライブが終わり、大団円。そっとお手洗いの鏡で目の赤みをチェックし、まず誰にもバレないと判断しフロアに戻ったが、セリグマンの猫しいなちゃんにすぐ「もしかして泣きました?」と言われた。なんて鋭いんだと思った。

気を取り直しフロアを見渡すと、ライブが始まる前の浮き足立った空気はもうなくなっていた。きっとなかけんとはすぐまたライブで会える。そこにはしみったれた雰囲気は微塵もなくて、皆なかけんとただただ話したがっていた。わたしも少し話せた。そんな夜だった。

そんなこんなでカレーを食べてライブを見て、非常に楽しい時間を過ごせたのだが、惜しむらくは、カレー会を主催した辻くんが謎の新入生こころちゃんをナバロに放置・置き去りにした点である。聞くと彼女は辻くんの誘いでカレー会〜ナバロまで来たとのことだったが、自転車を辻邸に置いたままだったため、帰る術とタイミングを完全に失ってしまっていた。その時すでに深夜2時頃。わたしの運転で辻邸まで彼女を送り届け、そこから自転車で帰宅してもらうことにしたが、辻くんにその旨を伝えると、「自分は友人の車で帰ります」とのこと。残念ながら「自分が誘ったんで、こころちゃんと一緒に帰りますよ」という言葉が彼の口から出てくることはなかった。わたしはそうへいくんを誘いこころちゃんを辻邸に無事送り届けた。その後ナバロに戻ったが、辻くんはもうそこにはいなかった。そんな夜だった。