All Shimmer in a Day 発売によせて

2021年3月3日、ついに世の中に放ちました。

 

気づけば1st EPのレコーディングから約2年近くたってしまった。

この約2年間、ほんとうに色んなことがあって、それはバンドのことでも個人的なことでも社会全体のことでも、ほんとうにたくさんのことが。

 

2019年6月のNAVAROブッキングライブに誘われたとき、すごく嬉しかったのを今でも覚えている。サークル外でのライブははじめてだったので震えながら、当時4曲しかなかったのであわてて“Bootleg”という曲をつくった。

結果、ライブ当日はMCでPAの方の名前を間違えたり堂々と音を外したり対バンの石頭地蔵の爆音にトラウマ級の衝撃を受けたりした。名前を間違えたのでもう2度とライブには誘われないだろうなと轟音で朦朧とする意識の中思った。打ち上げがすごく楽しくて、Doit Science  清田さんとダイムバック・ダレルの話をしたりした。

 

翌日、なんやかんやあってレコーディングをして音源をつくろうということになった。高校生の頃大好きな音楽ブログで知った“talk”のメンバー2人が、Twitter上でMy Lucky Dayのレコーディングの話をしていてこれは夢か?と思った。なんやかんやの大部分はこういった夢みたいな展開の連続だった。

それから2019年の初夏にJun Kawamoto氏のもとNAVAROにてレコーディング、Kensei Ogataさんのミックス・マスタリングのもと完成した5曲入りのEPを2020年5月に自主デジタル・リリースした。ほんとうはフィジカル・リリースしたかったのだが、世の中がとんでもないことになってしまったので悩んだ末Bandcampでのデジタル・リリースというかたちをとった。

 

2020年、コロナ禍でひとり家に閉じ籠る日々の中、色々なことを考えた。バンドマンにすらなりきれないフリーターになり果て思ったのは、わたしたち4人でしかできないことを今のうちにやりきりたいということだった。しかしどうやらきっとその時間は残り少ないであろうということも。

 

2020年10月に観たNAVAROでのtrialerror+Cynicalsmileisyourfavoriteの2マン。ライブ後4人で興奮気味に語り合い、その思いはさらに強くなった。

11月に新曲をレコーディングして、フルアルバムをつくろうと決めた。

制作途中でのライブに、はるばる東京から熊本まで足を運んでくださったTESTCARD RECORDS肥沼さん。ライブの翌日みんなでスリランカカレーを食べながら、リリースの話がまとまっていった。九州の片田舎から東京へ、音楽を通してでしか出会うことがなかったであろうひとたちと作品がつくれることに心から喜びを感じた。

 

リリース、そして熊本〜福岡〜東京でのレコ発。きっと死んでも忘れられないであろう3月がはじまった。

3月いっぱいでBa.仲村が脱退する。先日南の島に帰ってしまった。仲村はたぶん大学に入って最も共にバンドを組んだベーシストだと思う。そもそも軽音部には仲村の誘いで入部したので、My Lucky Dayは仲村がいなければ存在し得なかったバンドだといえる。こんな長ったらしい文章ぜったい読まない人間だと思うので言うけど、今までありがとう。ちゃんと髪洗えよ。

 

17歳のころ、熊本にこんな音楽を鳴らす人たちがいるんだと心を揺さぶられたtalkのふたりと、今のわたしたち4人でしか鳴らせない音を、1枚のアルバムとしてかたちに残せたこと。そして、右も左もわからないわたしたちをリリースまで導いてくださったTESTCARD RECORDS 肥沼さんには感謝してもしきれない。

 

高校生の頃、通学バスの中で毎日聴いたペインズ、ヤックは解散してしまった。わたしは大人になりきれないまま23歳になって、まだ彼らへの憧れを捨てきれずにいる。ギターはいつまでたっても上手くならないし、音楽との上手な向き合い方なんてわからない。

しかし、レイ・ブラッドベリが描いた金星に7年にいちどの夏が訪れたように、1時間だけひらく花のような太陽のきらめきが、今わたしをとりまく音楽に降り注いでいる。